今週の木曜日、10月1日から、
カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」への対策が、
企業の規模を問わず、すべての事業主に義務づけられます。
お客様からの理不尽な要求や暴言から、
働く人を守るための仕組みを、
会社として整えなさい、というものです。
私どものような小さな会社も対象です。
ニュースでこの話題を見るたびに、
私はある言葉を思い出します。
「お客様は神様です」
昭和を生きてきた私たちの世代なら、
一度は耳にし、口にもしてきた言葉だと思います。
そして、カスハラの場面でも、
この言葉が持ち出されることがあるそうです。
「客は神様なんだから、言うことを聞け」と。
ところが、この言葉の生みの親である
歌手の三波春夫さんは、
まったく違う意味で使っておられたのです。
三波さんが言いたかったのは、
神前で祈るときのように雑念を払い、
澄み切った心で歌い、お客様に喜んでいただく、
という、歌い手としての心構えだったそうです。
「客なのだから、何を要求してもいい」
という意味は、どこにもありません。
私はこのことを知ったとき、
少しドキッとしました。
言葉の意味を、ずいぶん都合よく
取り違えてきたのではないかと。
もうひとつ、ドキッとした話があります。
労働組合のUAゼンセンが行った2024年の調査では、
迷惑行為をした相手は、男性が約7割。
推定年齢では、50代以上が約4分の3を占めていました。
……私の世代も、他人事ではありません。
「昔はこれくらい普通だった」
「こっちは金を払っている客だぞ」
そんな感覚が、どこかに残っているのかもしれません。
振り返ってみると、私にも心当たりがないわけではありません。
銀行の窓口で待たされたとき。
役所の手続きが思うように進まないとき。
電話がなかなかつながらないとき。
声を荒げたことはなくても、
つい語気が強くなったり、
ため息まじりの顔をしてしまったことは、
正直あったように思います。
窓口の向こうにいる人も、
誰かの家族であり、
仕事を終えれば私たちと同じ生活者です。
私は仕事柄、
お客様からご相談を受ける立場でもあり、
職人さんや業者さんにお願いする立場でもあります。
両方の立場を経験してきて思うのは、
よい仕事は、よい関係からしか生まれない、ということです。
こちらが敬意を持って接すれば、
相手も「この人のために、もうひと頑張りしよう」
と思ってくれるものです。
それは、30年以上この仕事をしてきて、
何度も実感してきたことです。
三波春夫さんの心構えを知って、私は思いました。
お客様を大切にするように、
客の側も、働く人を大切にする。
そんな関係でありたいものです。
本来、それが「お客様は神様です」の
あるべき姿なのかもしれません。
年を重ねた私たちの世代だからこそ、
怒る前に、ひと呼吸。
そして、「ありがとう」を先に言える客でありたい。
10月からの義務化を前に、
会社の準備と一緒に、
まずは自分自身を振り返ってみた日曜日でした。
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